ドイツの幼稚園 2 -kindergarten-

Munich Kindergarten Report 2:

幼稚園発祥の国、ドイツ。教育学者フレーベルが、1840年小学校前の子供達のために開いた学校がキンダーガルテンの始まりと言われています。

前回レポート(ドイツの幼稚園1)したように、ますます多様化するドイツでは、どのように幼児教育が行われているのでしょうか。障害のある子供達も一緒に学ぶインクルーシブ教育をとりいれているミュンヘンの2つの幼稚園を見学しました。


1つ目は、ミュンヘンのオリンピア公園近くにある公立の幼稚園。私たちブランコメンバーの自宅近くにあり、見学を申請しましたが、偶然にも世界中から幼児教育に携わる人々が見学に訪れている幼稚園のようです。



ドイツでは、クラス全員一緒に学習、活動するような一斉保育の時間がほとんどありません。基本的に各自が好きな活動を選び、自由に遊びます。日本のやり方に慣れていると、ドイツ方式は放任のように見えますが、これも自主性を重視するドイツ流教育法のようです。

そんな中でも、こちらの学校では、8時半から朝の集会として、全員が集まり顔を合わせる時間を設けています。手話つきの歌で合唱し、日直さんがご挨拶。園長先生のお話。

集会をする場の壁には、休暇で訪れた場所から送られた絵葉書に繋がれた世界地図が掲示されていました。今年は"世界を知ること"がテーマの1つになっているようです。

手話のアルファベット表も貼られています。耳が不自由な子供達、そうでない子供達に関係なく、コミュニケーション手段の1つとなっているのでしょう。



ドイツは小規模の幼稚園が多く、生徒の数も日本に比べて少なめです。こちらの幼稚園は、3〜6歳の年齢混合縦割りで3つのクラスに分けられ、そのうちの1つは障害のある子供達も一緒に学んでいます。

各クラスの教室ではグループごとにテーブルが分けられ、お絵描きの道具やおもちゃが置かれており、各自好きな場所に行って自由に活動をしています。教室には様々な遊びを誘発する遊具、カーニバルのような変装するための衣装、おままごとの器具、大人が使うような日曜大工の道具など、様々なモノが置かれています。



朝の集会の後、教室に戻った子供たちは、パンやチーズなどの朝食をとったり、絵を描いたり、レゴで遊んだり…とさまざま。保育者達は各テーブルを回ってアドバイスしたり援助したり。常勤の保育者に加え、曜日によって非常勤やインターンの保育者が加わり、各クラスに複数の大人たちが参加します。



教室の他に、世界の動物のフィギュアや民俗楽器が置かれている部屋があり、こちらでは小グループでの音楽ワークショップが行われていました。

こちらもあくまでクラス全員ではなく、主体的なグループでの参加。

先生が語る森のお話と、奏でるギターに耳を澄ませながら、子供たちは各自の楽器を使って、森の動物たちを音で表現していました。




保育者や保護者、子供たちが本を借りることができる図書室では、情緒障害のある子供のための活動も行なわれています。クラスでの遊びの合間に、専門の指導者との対話や、自己と向き合う時間が設けられています。木の実や葉などの身近な素材を使って、カラーライトボックスの上に造形する活動が行われていました。


外遊びの時間は、隣にあるもう1つの幼稚園の子供たちも混ざって各自走り回っています。

自然豊かな園庭の奥には、子宮を模した遊具が吊られており、穏やかな隠れ場所を提供しているようでした。





2つ目は、ミュンヘン西部にあるシュタイナー教育の幼稚園。こちらで保育士として働く日本人のめぐみさんにご案内頂きました。

絵本の中から出てきたような校舎と園庭。1階は障害のある子供7名のクラス、2階は障害のある子供4名を含む15名のクラスに分けられ、こちらもドイツの幼稚園が基本的にそうであるように、縦割りの年齢混合です。何らかの障害をもつ子供達が園全体の半分の割合を占めています。




シュタイナー教育では、自然素材のもつ温かみや素朴さが重視されています。

教室には、木製のおもちゃや家具、手作りの遊具や布が置かれ、スチールやプラスチックなどの硬い人工の素材は使われていません。

季節の植物、木の実などが置かれ、隅々までやさしい温もりを感じさせます。



お昼ご飯の前、子供たちが外遊びをしている間に食事の準備が進行していました。

小規模クラスだからこそ可能な輪になっての食卓。




時代の変化を感じさせない普遍的な人間の営み、温もり、安心さを感じさせる雰囲気の中、子供たちがのびのびと遊べる環境を提供していました。

青々とした自然が眩しい理想郷のような場所でした。



ミュンヘンの2つの幼稚園を紹介しました。

一緒に遊ぶ場でありながら、あくまでも個での活動や主体性が重視されているドイツ教育の第一歩、キンダーガルテン。このような場から、ドイツ人の異なる「個」が育まれていくのだと実感しました。





BLANCO

日本/イタリア/ドイツを拠点にエデュケーショナル/ラーニングプログラムを企画実行するBlanco(ブランコ)の情報サイト。 the website of Blanco: planning and running educational/learning program based in Japan, Italy and Germany.

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