ドイツの幼稚園 1 -kindergarten-
Munich Kindergarten Report 1:
ミュンヘン市内で電車やバスに乗っていると、必ずと言っていいほど、ドイツ語以外の言語が聞こえてきます。2015年に移民の波が押し寄せましたが、既にそのずっと前から、ドイツは着々と多民族国家の道を歩んでいます。戦後すぐ、外国人労働者としてドイツに移住したトルコ人や70年代にボートピープルとして受け入れられたベトナム人の子供達が、今や「普通の」ドイツ人。うちの息子が所属している地元のサッカークラブは、元ドイツ代表キャプテン、フィリップ・ラームの出身クラブとして有名ですが、チームメート10人のうち、両親ともにドイツ人なのは3人のみ。あとは両親がクロアチア人、ギリシア人、ポーランド人、チュニジア人、それに日独ハーフや独仏ハーフ。そもそも、いくつかの民族の血が混じっているのは大陸文化では当たり前なので、ハーフという概念自体があまり意味をなさないかもしれません。
- 多様化する小学生サッカーチーム -
下の息子の通っている幼稚園も、親友のパパはブラジル人。息子のガールフレンドはチャーミングなインド人。先生もペルー人です。おかげで子供達はみなスペイン語で数が数えられるようになりました。両親共にドイツ人でない場合、入園当初はほとんどドイツ語ができない子もいますが、友達と遊びながら、みるみるうちに習得していきます。もちろん、ドイツ人家庭の子供と比べると、文法の正確さや語彙力に差がありますが、外国人家庭の子供には、就学前の1年間、週に1回、小学校で実施されるドイツ語準備コースに通うことが義務付けられています。
文化も言葉も違うのが当たり前。ドイツ語という共通言語でコミュニケートしながらも、一人一人の違いを大切に育てることが、ドイツの教育の根幹にあると思います。日本の幼稚園と比べると、「みんな一緒」という一体感があまりありません。たとえばクラス編成も、日本のように年少、年中、年長と年齢ごとではなく、3歳から6歳の子供達が縦割りになっています。入園式や卒園式もなく、新入園児は、時期をずらして順番に1人ずつクラスに迎えられます。公立幼稚園のクラス定員は24人で、保育士は通常2人。新しい子が8人だとしたら、夏休み明けの9月から12月の間に、1週間に1人の割合で徐々にクラスに馴染ませていくのです。最初の1週間は親も一緒に教室にいたり、年長の子とペアにして遊ばせたり、幼稚園ごとにさまざまな工夫をします。
数年前、息子を1週間ほど日本の幼稚園に体験入園させたのですが、みんな揃いのスモッグを着て、一緒に歌を歌ったり、工作したり、そうじしたり、とても温かく迎えていただきました。かたやドイツの幼稚園は、基本的に子供を放し飼い。子供が自分でしたいことを決めます。部屋ごとに、レゴや積み木、パズルや塗り絵などのコーナーがあり、それぞれ自分の好きな場所に行って遊びます。ダンスや運動、遠足なども、みんな一緒というわけでなく、やりたい子を募ってグループで実施。子供は自分で「参加したい」と意思表示しなければなりません。しっかりと言葉で自己主張することは、小さいうちからかなり鍛えられます。恐竜・宇宙・動物などいくつかのテーマに分かれて活動するプロジェクトで、どのグループに入るか決める際、他の子供に影響されないよう、1人ずつ部屋に呼んで希望を言わせたと聞き、驚きました。ドイツの幼稚園でもっとも大切にされている能力は「主体性」といえるでしょう。一方、日本の幼稚園のキーワードは「協調性」でしょうか。こんなところから、国民性の違いが生まれてくるのでしょう。
次回は、ブランコが訪問したミュンヘンの2つの幼稚園をレポートします。
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