素材と手刷り@イタリア社会協同組合

In February 2018, we held a workshop in the L.P.K. cooperative for the creative activities of the mentally challenged, in Pozzo d'Adda (MI), for a demonstration of printmaking without a press. We made prototypes according to participants' skills and production desire.


2018年2月半ば、イタリア ミラノ郊外の社会協同組合Cooperativa L.P.K.(Laboratorio Paul Klee)の工房にて、ブランコによるワークショップを行いました。ブランコのメンバー クリスティアン ボッフェッリが2001年の創設に関わった当L.P.K.組合では、精神疾患や心身障害の大人に向けた美術療法活動をメインに、近年ではペットセラピーや農業、保育園や難民受け入れなど、多様な人々が地域で共生するための幅広い取り組みが行われています。


月曜から金曜まで、絵画や陶芸、編物、演劇などのワークショップ活動が行われ、オペレーターの協力のもと作品を制作したり、商品としてマーケットで販売したりしています。

今回のワークショップは、版画好きなオペレーターから、プレス機がない現状でどんな制作が可能か相談を受けたことから実現されました。日本の学校でもお馴染みのバレンを使った手刷りを応用することによって、多様な表現が可能になります。日本では身近な版画ですが、海外では未経験者も多い表現手段。さまざまな特技や障害をもつ参加者の制作欲求や技能に合わせて、素材と向き合いながら試作できるよう企画しました。



まずは2つのグループに大別。既に木版画の経験のある人々は、段ボール紙や様々な素材を使ったコラグラフ、版画が初めての人々は、彫刻刀を使って木版画に挑戦です。

参加者の何人かは、手が不自由なので、可能な作業は自分で、そうでない作業はオペレーターや私たちのアシストのもと、相談しながら版を作っていきます。

会話が難しい参加者も、自分が想い描いたイメージについては積極的にどんな表現にしたいか伝えようとしてくれます。彼らの意思を汲み取り、必要な範囲で表現の手伝いをするオペレーターとの信頼関係はとても重要だと感じます。

こちらは快適なソファをイメージした作品 ↓ 。

素材の触感を楽しみながら、自由に貼付けていきます。柔軟な紙という土台を活かして、自由な形の版として切り取ることも可能です。

仕上がった版にインクをのせて刷ってみると、意外な表情が浮かび上がります。

ここで初めて凸凹が生み出す形を見ることができます。



木版画のグループは、情緒障害や身体障害のある参加者が、自分なりのテーマを決めてイメージを作っていきます。こちらはメンバーのキャラも多彩で、ひたすらおしゃべりを続ける人、黙々と作業に勤しむ人、落ち着いて制作に集中するのが難しい人もいました。

彫刻刀の安全面に気を使いつつ、作業に取り組みます。

初めてのバレンを使った手刷り作業。シャモジや木のスプーンを使っての部分的な刷りにも挑戦。

一律的な刷りを実現するプレス機とは違って、道具や圧力によりイメージを部分的にコントロールできるのが手刷りの面白さ。

初めて即興的に仕上げた版画は、直接描写とはまた違った豊かな線を生み出しました。

版と刷り上がった作品を比較しながら、そのプロセスの中で版画のしくみを学んでいきます。

絵画とは違う間接的な版表現の体験。

素材との直接的な接触を通して作った版は、インクを付けて紙に刷ってみると、また違った表情を見せてくれます。その意外な結果を新鮮に感じた参加者も多かったようで、今後の作品制作のための表現手段の1つになりそうです。

ゲストオペレーターとして参加した私たちブランコとの作業が、新たな制作刺激になったことを祈っています。

関連リンク:

L.P.K.協同組合の公式サイト http://www.ellepikappa.org

BLANCO

日本/イタリア/ドイツを拠点にエデュケーショナル/ラーニングプログラムを企画実行するBlanco(ブランコ)の情報サイト。 the website of Blanco: planning and running educational/learning program based in Japan, Italy and Germany.

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